2025.04.29
株主総会のオンライン化(ライブ配信・アーカイブ化)の必要性|フェアディスクロージャーの観点から
近年、株主総会のオンライン化が急速に進んでおり、特に新型コロナウイルスの影響を受けてその必要性が一層高まっています。
これまで対面形式で行われていた株主総会は、2021年の会社法改正により、物理的な会場を持たない「バーチャルオンリー株主総会」が合法的に認められるようになりました。
本記事では、株主総会のオンライン化の背景やメリット、ライブ配信やアーカイブ公開の重要性に加えて、フェアディスクロージャーの観点からオンライン化がどう企業に貢献するかを解説します。
また、今後のトレンド予測や先進企業の事例を通じて、企業がどのようにオンライン株主総会を活用しているかをご紹介します。
株主総会のオンライン化の背景と重要性
株主総会のオンライン化は、特に新型コロナウイルスの影響を受けて急速に進展しました。
従来、株主総会は対面形式が主流でしたが、2021年の会社法改正により、物理的な会場を持たない「バーチャルオンリー株主総会」が合法的に認められるようになりました。
オンライン株主総会は、株主が自宅からでも総会に参加できるようになり、地方在住や高齢の株主にとっても参加しやすい環境となります。
また、天候や災害、感染症などの外的要因による影響を受けることなく安定的に運営できるため、企業にとってもリスク回避の手段となるでしょう。
グローバルに展開する企業にとっても、海外株主への対応が容易になるため、オンライン株主総会はまさに時代のニーズに応えた取り組みとなります。
オンライン株主総会の普及が予想される
新型コロナウイルスの影響により、2020年から2021年にかけて、オンライン株主総会の需要が急激に増加しました。
対面形式の総会が開催できなくなったため、多くの企業がオンラインでの株主総会を実施しました。
その後、会社法改正によりオンライン株主総会が正式に認められ、バーチャルオンリーでの開催が可能となりました。
このような変化は、企業にとっても株主にとってもメリットとなるため、今後さらに普及すると予想されます。
株主総会オンライン化によるメリット
株主総会おオンライン化のメリットを、以下にまとめました。
- 物理的に株主総会に出席できない株主でも、インターネットを通じて参加できるようになる
- 地方在住の株主や高齢者でも参加しやすくなる
- 天候、災害、感染症などの影響を受けにくい
- グローバル株主にもアクセスしやすくなる
オンライン株主総会は、企業にとっても株主にとっても利便性を向上させるツールとなります。
株主総会のオンライン化に伴いライブ配信(リアルタイム中継)も必要となる
株主総会のライブ配信は、企業の透明性を向上させます。
リアルタイムでの中継により、株主は総会の議論や決議過程に直接アクセスでき、企業の意思決定がどのように行われているのかを把握できるようになります。
株主総会ライブ配信のメリット
株主総会のライブ配信により、遠隔地にいる株主にもタイムリーに情報を提供できます。
物理的に総会に出席できない株主にとって、ライブ配信は株主総会に参加するための新しい手段となるでしょう。
また、ライブ配信によって、株主は総会の内容をリアルタイムで確認できるため、企業への信頼感やガバナンスの評価も向上します。
投資家や市場の評価にも良い影響を与えるでしょう。
株主総会ライブ配信の懸念点
株主総会のライブ配信にはいくつかの懸念点もあります。
たとえば、録画されることで発言が抑制される可能性がある点です。
経営陣や役員がライブ配信を通じて発言する際には、慎重に言葉を選ばざるを得ない状況が生まれる場合があります。
また、機密情報が流出するリスクや、炎上の可能性について警戒する企業も存在するため、発言が限定的になってしまう恐れがあります。
これらのリスクに対処するため、適切な管理体制とセキュリティ対策が必要です。
アーカイブ(録画公開)を利用してさらに信頼性を強化
ライブ配信の後にアーカイブを公開することは、透明性と説明責任をさらに強化します。
株主が総会を視聴できなかった場合、後日アーカイブを視聴することで、情報に遅れずアクセスできます。
また、株主だけでなく、投資家やESG評価者など外部の利害関係者にも同じ情報を提供できるため、企業の信頼性を高めることができます。
ガバナンス強化の一環としてのアーカイブ化
アーカイブ化は、企業のガバナンスやコンプライアンスに対する積極的な姿勢を示す手段となります。
録画された総会の内容は、後から簡単に確認でき、必要に応じて第三者による検証が可能となります。
これにより、株主や社会に対して企業の誠実さや透明性をアピールできるのです。
アーカイブ化の注意点
アーカイブ公開には慎重な対応が求められます。
たとえば、機密情報や名誉毀損のリスクに配慮して、公開範囲や編集内容を慎重に検討する必要があります。
公開する内容が不適切である場合、企業の信用を傷つける恐れがありますので、十分な管理体制が求められます。
フェアディスクロージャーの観点から見たオンライン株主総会
株主総会での情報提供が不公平に行われることを防ぐために、ライブ配信やアーカイブ公開が必要です。
株主総会の場では、経営陣が今後の事業戦略やリスクに関するコメントを行うことが多く、これらの情報が一部の株主にしか提供されないことは、公正開示の原則に反する可能性があります。
そのため、オンライン配信を通じて、すべての株主が同じ情報にアクセスできるようにすることが求められます。
フェアディスクロージャーとは?
フェアディスクロージャーとは、企業が一部の特定の投資家やアナリストだけに有利な情報を与えることを防ぎ、市場参加者全員に公平に情報を開示する原則です。
投資家に平等な情報提供を行うことで、株式市場の公正さを保ちます。
制度的・実務的課題と対応策
株主総会のオンライン化に向けては、いくつかの課題が予想されます。
- 法的整備
- 技術的セキュリティ対策
- 社内リソース
それぞれにおける予想される課題と対応策について解説します。
法的整理
オンライン株主総会において、議決権行使の方法や株主の権利行使についての整理が必要です。
新たな法的枠組みを設けることで、株主の権利が適切に保護されるようにする必要があります。
技術的セキュリティ対策
オンライン配信には、改ざん防止や視聴者の本人確認などのセキュリティ対策が必要です。
これにより、情報漏洩や不正アクセスを防ぎ、安全なオンライン株主総会を実現します。
社内リソースの確保
オンライン株主総会の運営には、IR部門や法務部門のリソース確保が不可欠です。
専門のスタッフや外部の専門家を活用することで、円滑な運営を行う必要があります。
先進企業の事例
株主総会のオンライン化は、企業によっては「まだ早い」と感じる場合もあるかもしれません。
しかし、実際に先進企業はオンライン化を導入しています。
以下に、4つの事例をまとめました。
トヨタ自動車
トヨタは2020年以降、株主総会をオンラインで同時配信し、録画アーカイブも公開しています。
株主は遠隔地からでも株主総会に参加できるようになり、企業の透明性を大幅に向上させています。
三菱UFJフィナンシャル・グループ
三菱UFJは、株主総会のオンライン出席機能を導入し、実際に議決権行使までバーチャルオンリーで行えるようにしました。
株主の参加のハードルを下げ、株主総会の民主化を実現しています。
ソニーグループ
ソニーは2021年以降、株主総会をYouTubeライブで配信し、字幕付きやスライドを併用することで、視聴者体験を向上させました。
これにより、ESG評価やガバナンス評価が高く評価されています。
リクルートホールディングス
リクルートは、年次報告や決算説明会に加えて株主総会もオンラインで配信し、動画アーカイブも公開しています。
株主との対話を重視する姿勢が評価され、透明性の高い企業文化を築いています。
オンライン株主総会の配信ツール選定のポイント
株主総会のオンライン配信ツール選定には、セキュリティ、操作性、機能性など、さまざまな要素を検討する必要があります。
以下に、配信ツール選定時の評価項目とその検討ポイントを挙げます。
セキュリティ
企業は株主の情報や議論内容を守るため、厳格なセキュリティ対策が求められます。
たとえば、以下3つを意識します。
- 株主限定で視聴できる
- 不正アクセスやハッキングのリスクを軽減するためのセキュリティ技術
- 情報漏洩や盗聴のリスクを避けるためのデータ暗号化
セキュリティ対策を徹底することで、株主の信頼を得ると同時に、企業のブランド価値を守ることができます。
オンライン株主総会の配信において、情報漏洩や不正アクセスを防ぐための安全性を最優先で考慮することが重要です。
操作性・安全性
オンライン株主総会は、全ての株主が参加できなければ意味がありません。
そのため、高齢株主やITに不慣れな株主でも、簡単に参加できるように配慮する必要があります。
たとえば、以下3つを意識します。
- シンプルで直感的に操作できるUI
- 視聴者数が多くなることが予想されるため、サーバーが同時接続数に対応できる
- モバイル対応
操作性や安定性に配慮したツール選定は、株主が円滑に参加できる環境を作るために不可欠です。
誰もがストレスなく参加できるような配慮を忘れず、安心して利用できるツールを選びましょう。
機能性
株主総会のオンライン配信には、情報提供だけでなく、株主との双方向性を促進する機能も求められます。
たとえば、以下のような機能です。
- 質疑応答や投票機能
- 資料共有機能
- 視聴者の行動データや参加状況を分析できるレポート機能
これらの機能を通じて、より多くの株主の意見を反映させ、効果的な議論を促進しましょう。
拡張性
将来的にオンライン株主総会がさらに普及する中で、多言語対応やアーカイブ編集など、拡張性を考慮したツール選定が求められます。
たとえば、以下のような機能です。
- 複数言語への対応
- 字幕や翻訳機能
- アーカイブ編集機能
拡張性の高いツールを選定することで、企業の成長に合わせた柔軟な運用が可能になります。
コスト
配信ツールの選定において、コストは大きな要素です。
企業の予算に応じて、適切なツールを選びましょう。
特に意識すべきポイントは、以下の3つです。
- 初期導入費用・運用コスト
- IR部門やIT部門に負担がかからないサポート体制
- 専門ベンダーのサポート体制
運用コストや社内リソースの負担を考慮し、費用対効果の高いツールを選ぶことで、企業にとって継続的な成功を支えることができます。
オンライン株主総会の今後の展望
オンライン株主総会は、今後ますます普及し、企業の透明性やガバナンス強化にとって重要な手段として定着していくと予測されます。
その中で、どのように変化していくのか、今後の展望について3つの観点から解説します。
オンライン株主総会の普及と企業ガバナンス強化
オンライン株主総会は、今後さらに普及し、企業にとって不可欠なガバナンス手段として定着するでしょう。
オンライン化により、株主の参加ハードルが低くなり、株主からのフィードバックをより多く得られるようになったり、株主との距離が縮まり、企業の意思決定が透明になりやすくなったりするためです。
これまで参加が難しかった株主も意見を共有できるようになり、企業の意思決定が広範囲な意見を反映したものとなり、ガバナンスが強化されます。
株主とのエンゲージメントがさらに深まり、信頼性の向上に寄与することが予測されます。
フェアディスクロージャーの実現と企業の信頼性向上
オンライン株主総会は、フェアディスクロージャー(公正開示)を実現するための重要な手段となると予想されます。
企業はすべての株主に公平な情報を提供でき、情報の非対称性を減らし、透明性を確保することができます。
株主全員が同じ情報にアクセスできることは、企業の信頼性を高め、市場での評価向上に繋がります。
今後のトレンド予測
今後、オンライン株主総会の技術は進化し、AIによる字幕や翻訳機能、要約機能が追加されると予測されます。
これにより、株主総会がより多様な株主に対応できるようになり、特にグローバル株主にとっても参加しやすい環境が整います。
また、AIを活用した自動翻訳機能や要約機能が実装されることで、視聴者は効率的に重要な情報を把握できるようになります。
株主総会のオンライン化に備えて適切なツールとサポート体制を選定しましょう
株主総会のオンライン化は、今後必ず需要が高まっていくと予想されます。
フェアディスクロージャーの観点からも、オンライン化が求められるでしょう。
そのためには、今からツールやサポート体制を選定しておく必要があります。
「どのようなツールを使えばよいかわからない」
「ツールを使いこなせない」
「どこかにサポートを依頼したい」
もし上記のようなお悩みがあれば、ぜひ弊社にご相談ください。
フリートは、これまでも数々のオンライン配信をサポートしています。
参考となる過去の事例を以下にピックアップしていますので、そちらもご確認ください。
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